『どんぐり姉妹』

『「こんど」

麦くんは言った。
私は聞き返した。
「え?」
麦くんは真っ赤になって、
「いや、またいつか。」
と言った。愛の告白よりももっと聞いていたい言葉だった。「こんど」ってただそれだけなのに。』
(『どんぐり姉妹』 よしもとばなな 新潮社)
 
主人公のぐり子は、姉のどん子と共にどんぐり姉妹というユニットを組んでいます。
彼女たちの仕事は、送られてきたメールに返事をすること。
他愛のないものから、誰にも相談のできない悩みが綴られたメールに、彼女たちは返事を書きます。
 
外交的な姉に対して、内向的な妹。けれど、どこか似た雰囲気のある2人。
近いようで遠いようで近い、兄弟とは不思議です。
 
ぐり子の中学時代の想い人だった麦くんが、彼女の夢に現れるようになってからぐり子の内向きな生活が少しずつ変化します。
 
大人の恋のような決定的な出来事はない、口約束もない、そして嫉妬も打算もない。
ぐり子と麦くんのエピソードは夢やまぼろしのようにも思えて、切なくもあります。